2001年7月23日  イロハのイ


コンピュータの仕事をしていると電話での問い合わせに応対することがしばしばある。その際、誰もが一度は経験し、実感するのが、「電話で綴りを正確に相手に伝えるこの難しさ」だ。DOSの時代に比べてWindowsの時代になってからはコマンドスペルを直接ユーザーに打ち込んでもらうことはかなり少なくはなったが全く無くなった訳ではない。相手がある程度の教養(これが重要)と少しばかりのコンピュータの知識を持っていれば全く問題無くスムーズに伝達できるがそうでない場合は悪戦苦闘は必至だ。

中でも P「ピー」とT「ティー」、D「ディー」とE「イー」は発音が似ていて区別がつき難い。

DOS時代かならずお世話になるCOPYコマンド、このスペルにも問題のPが含まれています。シー、オー、ピー、ワイ と電話で話しても COTY となってしまう場合が多々ある。コピーですよコピー とここまで言えば普通 COPYと判りそうなものだが一向にピンと来ない顧客も中にはいる 「お前 中学出たんかい!」と思わず突っ込みたくもなる。
このような事はコンピュータ業界だけではない。前日、某FMラジオ番組で同様な場面に出くわした。 クイズ問題でバレンタインデーのバレンタインの綴りの問題だったが、電話で応募したリスナーの答えが V,A,L,E,N,T と言った時点でそのラジオ番組のパーソナリティは VALENP と言ったように聞こえたらしく不正解としてしまった。女性リスナーの反応は「え?」って感じだったがそのままパーソナリティより不正解を言い渡されてしまったのだ。これは明らかにパーソナリティー(某*松氏)の聞き間違いだ、そもそもPとTは発音が似ているので聞き取り間違いは十分に起こり得るという認識がそのパーソナリティには全く欠けていたのである。ラジオ放送に携わる者としてのプロ意識に欠けた所以であろう。「だいたいVALENまで答えられるリスナーがバレンパインとなるはずねーだろ!!」とラジオを聞きながら一人で突っ込んだものだ。

こういった間違いを防止し正確に綴りを音声で伝達する手段 というのが昔から考えられている。日本では昔、電報を送るときに使われた、朝日のア イロハのイ 上野のウ などという語呂合わせのような文句を使っていた。このように○○の○と広く認知されている単語の先頭の文字で伝える方法だ。当然英語版が本家本元 A=アルファー、B=ブラボー、C=チャーリー といった具合にZまでと数字や記号までが決められている。これをフォネティックコードと呼びよび国際的に決めれられているもので無線をやっている方の間では常識中の常識らしい。
ただ日本の一般大衆には広く認知されている英単語というのものが存在しないので、我流のフォネッティックコードなるものがその場その場、相手によって即興でつくられているのが実情だ。

ある年配技術者の電話口で爆発した即興フォネティックを紹介しておこう

T「Tシャツ(テェーシャツ)のテェー 」(あんた何処の人?)
P「ピーですよピー ティーじゃありません ペー ね  ペー」 (林屋ペーかい!)
I「イベントのアイ」(Eventなんですけど・・・・)
E「エービーシ(ABC)のイー」(含んでねーじゃねーか!)

わが社の伝説となった笑い話だが、即興フォネテッィクは高度なボキャブラリが要求されるので使用には十分注意してもらいたい。下手に使うとあなたの人格そのものが否定されてしまう恐れがあります。

P.S.
しかしここで素朴な疑問が・・・日本語版フォネティックコードでは「ん」はどうやって表すのだろう?  ん から始まる単語なんて存在しないのだ。だからこそ尻取りに勝敗が付くと言う物。正解は 「お終いのん」 んは50音の一番最後に来る事からこうなったのだ。 なるほど 筆者が考えた「○このん」よりはよっぽどセンスが良いな〜(笑)