2002年11月10日  汎用人型決戦兵器じゃなくて・・・・


今から25年程昔、ビルゲイツが投資家の前で自分の夢を熱弁していた頃、日本では空前の電卓ブームが興った。小型化した電卓は世界を驚かせ、日本製品の優秀さを世に誇っていた。

当時、電卓の機能は全てLSIに実装する事に実現していた。そのため日本の電卓メーカーはアメリカのLSIメーカーに特注でさまざま機能を付加した電卓用LSIを発注していた。日本からの多様な注文に応えるべくアメリカのLSIメーカーもいろいろな努力をしていた。そんな時、アメリカの小さなLSIメーカーからプログラマブルな汎用LSIを開発し、付加機能はプログラムで実装してはどうか?と提案があり、電卓メーカーはそれを採用した。世界初の汎用LSIを搭載した電卓自体はいまいちパッとしなかったがプログラマブル汎用LSIの無限の可能性に気付いたアメリカの小さなLSIメーカーは、20年後、世界一のCPUメーカーへと成長していった。今のインテルである。

時は移って今から10年程前、日本のパソコン市場ではNECがほぼ独占状態だった。IBMパソコンをベースに日本語表示の為の独自のアーキテクチャーで拡張したNECのパソコンは漢字フォントを漢字ROMに焼き込むことにより日本語を画面に表示していた。世に言う PC98シリーズである。閉塞した世界で発展したアーキテクチャーはやがて世界から隔離されていった。そんな時、PC-AT互換機にソフトウェアで日本語を表示する仕組みが考え出された。DOS/V と呼ばれ、漢字ROMを搭載する必要がなく、AT互換機の共通部品が使える 等の理由でコストも安くまたたく間にマニアの間に広まっていった。やがて富士通、日立、三菱 などもこぞって DOS/Vマシンを発表。1997年にはNECもついにPC98シリーズから撤退し、DOS/V陣営に完全移行した。

この様に ハード実装期 を経て ソフトウェアエミュレーション期 に時代は流れていくものである。ということで今回のキーワードは「汎用」です。長い前置きでしたがこれからが本題

現在、グラフィックスチップも ハード実装期からソフトエミュレーション期 に以降しつつあります。DirectX7で完成された ハードウェアT&L は DirectX8の過渡期を経て 完全なプログラマブルシェーダーを実装した DirectX9へと進化しようとしています。

3Dグラフィック画像のクォリティーはシェーディングで決まるといっても過言ではない。モデリングされたオブジェクトにテクスチャーを張っただけでは平坦な映像でしかなく10年前のゲームのような画像にしかなりません。光の反射の関係や映り込み、質感などさまざまな要素を加味して実写並みの映像が出来上がります。早い話がシェーディングとは映像に深みを与える効果処理と言う事になります。で、このシェーディングにも様々な手法があり、その良し悪しは映像に大きく影響します。ハードウェアでシェーディングが実装されていた従来のグラボでは当然、それ以外のシェーディングを使う事はできず、映像クォリティーの限界=ハードに実装されたシェーディングの限界ということになります。プログラマブルシェーダーではハードに実装されたシェーディングを状況に合わせて自由にプログラミングが可能になっています。モンスターズINCやアイスエイジのような画像がリアルタイムで動くゲームもいずれ可能になることでしょう。プログラマブルシェーダーに対応するDirectX9は大きな分岐点となります。このDirectX9に対応したグラボは来年より本格的に市場に登場し急速に浸透してくと思われます、来年の今頃にはLowEndクラスのPCに搭載されるようになる事でしょう。

ゲーマーの筆者としては物欲の種がまた1つ増えて悩ましいかぎりである