2002年4月21日  お幾つですか?


喫茶店で向き合う男女。緊張しまくる男性。運ばれてくるコーヒー

男性 緊張ぎみに:「お、お幾つですか?」
女性 にこやかに:「23です」
おもむろに23杯の砂糖を入れようとする男性・・・・

今では笑いさえとれない化石級のお笑いネタだが 実はビジネスの現場でこのようなやり取りが今も頻繁に行われている。
SEがユーザーに対して業務の質問をする。ユーザーがSEに対して回答をする。 この繰り返しでシステムの仕様が出来上がっていくのだが何故か出来上がったシステムにはユーザーの意思が正しく反映されていな事が多いのだ。SEの質問に対してユーザーが嘘を言う事など(極一部の例外を除いて)皆無と言ってよい。では問題は何処にあるのだろうか?

1.質問の意図が正しく伝達されていない。
この場合、質問するSE側の表現能力に問題がある場合と、質問を受け取るユーザー側の読解力に問題がある場合 とが考えられるが、いずれの場合も全面的にSE側にその責任があると思ってよい。質問する側は質問内容が正しく伝達できたかどうかの検証を常に怠ってはならない。相手の読解力に問題があるのであればそれを補完する工夫も必要だ。相手のレベルに合せてSE側が歩み寄る姿勢が必要なのだ。表現能力の乏しいSEというのは概ね思い込みが強く自己完結型が多いい。このタイプのSEは基本的にユーザーとの打合せが出来ないと思ってよい。
正しく伝達する為に重要なのが「用語」である。業種によって専門用語が多く使われているが、同じ業種であってもユーザーによって用語の解釈が微妙に異なる場合がある。例えばLPガス業界の場合だと 産気率という用語があるがこれはLPガスが液体から気化した場合の気体の量を表す単位だ。普通は10Kgの液体を気化させた場合の気体の体積で表すのだが1Kgの液体(10分の1)で表すユーザーもいたりする。他の業界でもこういった用語の微妙な差異は必ず存在するし、業界専門用語だけなく一般的な用語でも同様に差異があることがしばしばある。SEはこのことを十分に認識した上でユーザーと接しなくてはならない。
「用語に無頓着なSEにロクな奴がいない」 というのが業界20年の経験から得た筆者の持論だ。

2.ユーザーの回答を受けたSEが内容を正しく理解出来ていない。
「そんな馬鹿な」と思うであろうが実はこっちの方が上記の場合より多い。ユーザーからの回答のみをそのまま鵜呑みし、絶対の因果律としてシステム設計をするSEが多い。ユーザーの言ってる事に矛盾がないのか? 言わんとしている事の真意は? 言葉の奥に隠された真実は? 推理小説のようであるが まさにその通りである。折衝能力の乏しいSEが作った議事録や仕様書は推理小説そのものだ。打合せ時に聞くべきことを聞いていないという事が如実に露見する。メモを取るのに一生懸命で、ユーザーの回答の奥に隠れた意味を確認する為、推理小説にしない為のNextを怠っている。「1を聞いて10を知る」という言葉があるが、SEの場合「1を聞いて10を疑う」姿勢が必要だ。疑うといって嘘かどうかを疑うのではなく、言葉に表わされていない他に聞くべき事の存在を疑うということである。 偉そうに書いてはいるがこれは口で言うほど簡単な事ではない。筆者自身こういう考えでユーザーとの打合せに臨むようになるまで10年以上かかっているし、業務知識がないと志だけではいかんともしがたい物がある。

ユーザーときちんと打合せができる折衝能力というのは、IT業界に限らず常に求められてきた能力であり、SEの資質というよりもビジネスマンとしての資質と言うべきだろうが、この基本的な資質に欠けるSEが非常に多いように思える。20代の若いSEには無理な要求かもしれないが30代後半〜40代のSEには当然あって然るべき資質と思うのだ。 久しくそういうSEに出逢っていないのは 困ったものだ・・・